【知的財産】中小企業が大企業と対等に交渉するための大切な資産

おそらく知的財産に絡む仕事をしたことがある人なら誰でも気になっている係争案件。ユニクロとGUのセルフレジは他社に特許侵害で訴えられている。訴える側は中小企業。ファーストリスティングという巨大企業を相手に勝訴できるのか?

ユニクロ・GUのセルフレジ「特許つぶし」にファストリが総力、知財高裁の判決迫る

大企業、中小企業、大企業と渡り歩く中で、事業戦略に伴う製品力と知的財産力は、中小企業が大企業と対等に交渉するための大切な資産だとわかりました。

実際のところ、中小企業としては知的財産力(有益な特許)をもって、大企業の資金力と販売力を使わせてもらうためのライセンス契約を締結するのが一番利になりやすく、双方にとっても実りあるビジネスに繋がりやすいですが、今回の係争案件はそう考えると残念な争いでしかありません。

資金力で特許の数を打ち出す大企業と同じ戦略を中小企業は取れません。大切な事は特許の質を上げること。質を上げるとは、特許1件で広い権利範囲を主張できるだけの中身に仕上げることです。

例えるならば、漁師の投網、花見の場所取りなどが挙げられます。「どこに」「何を」「どれだけの広さで」自分のテリトリーを広げられるのか。もちろん広い方が良いに決まっています。1回の投網で半径1mしか広げられない漁師と半径5m広げられる漁師ではその後に得られる利益が異なってきます。1本の桜の木の下でどれだけの大きさでブルーシートを広げられるのか、その広さで花見を楽しめるメンバーの数が異なってきます。

文字を使って自身のもつ技術やアイデアの権利範囲を相手に伝える。それが特許の役割です。この文字を巧みに使って、広い権利範囲の特許を作り上げることが出来るのが弁理士です。

では企業の知財部員の役割は何でしょう。それは「どこに」「何を」を決めることです。魚のいないエリアに大きな投網を投げても魚は獲れません。花の咲かない桜を選んでブルーシートを広げても花見を楽しめません。弁理士の先生方は「広げるプロ」ですが、「場所を選ぶプロ」ではありません。それは自社内の知財部員が決めるのです。ビジネスで言い換えると、自社に有益なビジネスモデルや事業戦略を立てることと言えるでしょう。

ビジネスモデル構築や事業戦略の1つの指標として知的財産戦略がありますが、弁理士に丸投げしている中小企業があまりにも多すぎます。それは資金管理を公認会計士や税理士に丸投げしていることと同じです。士業はあくまでも経営のサポーターで、経営は自社で行うものです。

知的財産に関しても、ぜひ自社内に自走できる社員を作ってほしいですし、そういう方が増えるようにサポートできることが、私たちの嬉びです。